"女系"天皇の是非

この問題について論じるにあたっていくつかの本及び文書(末尾)を読了。

 

本題の前に、初見の事柄は以下の2つ。

①皇族の政治活動のリスク

天皇の公務の負担軽減等における"等"の意味

 

憲法学者の木村草太氏が指摘するところによれば、天皇の位置づけを国民に委ねる観点から、現在の立憲君主制から共和制に移行した場合に、皇族が政治活動を行い、一定程度の勢力となり、最悪の場合、戦前のような皇族を中心とする国体に戻るのではないか、従って立憲君主制の中で天皇制を位置づけることが適切。

 

あらゆる視点から天皇制を論じることは適切ではあり、安易な天皇制廃止論に対する反論として、上記の指摘は有用である一方、政治活動を通じた政治的影響力の有無については疑問が残る。

 

皇族の正当性は、能力ではなく、血縁に基づくものであり、もっと言うならその中立性に基づくと考える。果たしてその中立的な皇族が、特定の政治色を持つ政治活動を行うことを国民は是とするのか。

 

今上天皇の発言を受けて、生前退位について論ずることは、その行為が国事行為に限定される天皇が政治行為となる可能性があることから、生前退位といった文言が入らず、公務の軽減負担といった異なる文言が採用され、さらには生前退位についての論づる余地を残す観点から、"等"を付記。

 

本題の女系天皇の是非。

女系天皇反対派の根拠は非常に薄いといわざるを得ない。

 

基本的には、男女平等の世の中で、男女の差異を根拠に女系天皇を排除することは不可能に近い。女性天皇の配偶者(例 道鏡)がその地位を利用して、天皇を操る可能性といった可能性は、男性天皇にも同様にあてはまる。

 

歴代の女性天皇が代理や中継ぎなどであったという歴史的な背景を根拠とする主張についても、なぜ女性蔑視であった歴史に基づく必要があるのか、今後は男女平等の歴史あるいは伝統を作っていくべきではないか。また、歴史的にも、女性天皇が代理あるいは中継ぎであたってとしても、立派に天皇として君臨したということは名実ともに女性にも天皇になる資格があることの証左と考える。

 

他方で、悠仁様が誕生し、皇位継承問題が喫緊の課題ではならなくなった現状において、女系天皇の動きが進むとは考えにくい。本件は、男女平等・フェミニズムの観点ではなく、皇位継承の観点が主である。

 

果たして、先送りはいつまでできるのだろうか。

 

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皇室典範に関する有識者会議

天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議